占星術の探求で、私が小惑星にまで意識を向けることは、ほとんどありません。
しかし、ただ一つ、どうしてもその意味を知りたいと願った星がありました。それは、私のバースチャートの太陽と重なり合うように存在する「カイロン(キロン)」です。
ギリシャ神話において「傷付いたヒーラー」とも呼ばれるカイロン。
その名を知った時、私はまるで挑戦状を叩きつけるように、バースチャートに向かって心の中で呟きました。「私のこと、言い当ててみなよ」と(笑)。
そして結局、カイロンが位置するサイン、ハウス、他の天体との関係性(アスペクト)の全てが、私の心の奥底に眠る嫌な記憶の蓋を、容赦なく開き放ったのです(笑)。
今回は、そんな複雑な感情を呼び覚ますカイロンについて、深く探求してみたいと思います。
傷の記憶を辿る
占星術において、カイロンは私たちが抱える傷と同時に、その傷を癒すための方法を示唆すると言われています。
私のチャートでは、カイロンは安定と五感を重んじる牡牛座の3ハウスに位置し、生命力と個性を象徴する太陽と0度で結びついています。この配置が示すのは、「創造性」や「自己表現」に関わる、根深い心の傷です。
ハウスから読み解くに、その傷を負ったのは、まさに義務教育という社会の枠組みの中に身を置いていた時期だったと感じます。
そもそも、私の人生への基本的なアプローチを示すアセンダントは、自由と革新を愛する水瓶座。「固定概念に縛られない」という性質を持つ私にとって、画一的なルールが求められる義務教育の中で、自分らしさを自由に表現することがいかに困難だったかは、想像に難くありません。
周囲に受け入れられないという孤独感が、コミュニケーション、学習、そして人間関係全般に対する苦手意識へと繋がっていったのでしょう。自己否定の根源が、他でもない自分らしさそのものだったのです。
さらに、カイロンは行動力と情熱を司る6ハウスの獅子座火星と90度の角度を形成しています。これは、当時の私が、周囲の環境に対する抑えきれないストレスを内側に溜め込み、それが様々な体調不良として表面化していた状況と、見事に符合します。
傷を乗り越えるための鍵
しかし、絶望の中に一筋の光を見出すように、私のチャートには、喜びと拡大をもたらす5ハウスの蟹座木星が、カイロンと60度の調和的なアスペクトを形成していました。
この穏やかな繋がりは、私が家族という温かい絆や、絵を描くことや手芸といった創造的な活動を通して、心の傷をゆっくりと癒してきたことを示しています。
私にとって、何よりも安らぎを感じられる場所は、気兼ねなくコミュニケーションを楽しめる自宅でしたから、まさにその通りなのです。
ありのままの私を受け入れてくれる家族の存在があったからこそ、私は辛うじて心のバランスを保つことができたのだと思います。
私の心の傷を癒すための鍵は、まさにこの場所、この繋がりの中にあったのだと思います。
癒しのタイミング
長い年月が流れ、私は今、過去の傷を乗り越え、自分らしく自己表現する時を迎えた、いい大人になりました。
そして今、私はこれまで得てきた学びを通して、過去の傷を癒すという行為そのものを行っています。
もし、私が自分のバースチャートを深く読み解こうと決意していなければ、おそらく、過去の心の傷と正面から向き合うことはなかったでしょう。
もしかしたら、私たちにとって本当に良いタイミングが訪れれば、心の傷との向き合いは、案外スムーズに進むものなのかもしれません。


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